今注目の認知行動療法「ACT」と手帳『pure life diary』の共通点を心理学博士が解説
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「TO DO 思考ではなくTO BE思考で自分にやさしくなる」をコンセプトに掲げている『pure life diary』。
今回は、心理学博士の中島美鈴先生をお招きし、心理学の専門家の立場から『pure life diary』を解説していただきました。
昨今、新世代の認知行動療法とも呼ばれる「ACT」。自分が大切にしたい価値に向かって前に進んでいくことを目指す心理療法ですが、中島先生によれば、この手法と『pure life diary』のコンセプトは通ずるところがあるとのこと。
コーチングの手法を活かして開発された『pure life diary』の、心理学やカウンセリング領域から見た魅力を教えていただきました。
【プロフィール】
中島美鈴(なかしま・みすず)先生
1978年福岡生まれ、臨床心理士。公認心理師。専門は時間管理と認知行動療法。
肥前精神医療センター、東京大学、福岡大学などの勤務を経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて学術協力研究員。
主な著書に「悩み・不安・怒りを小さくするレッスン 「認知行動療法」入門」(光文社)など全43冊がある。
◎HP:https://nakashima.studio.site/
◎Twitter(X):https://x.com/rin_rinnak?s=20
目次
『pure life diary』のワークの問いは、心理学のカウンセリングにも通じている
――へいすけ:
『pure life diary』では最初に、価値観を知るワークを用意しています。趣味、学び、人間関係、パートナーシップ、仕事、暮らし、お金、幸せの8つの分野に分けてそれぞれ掘り下げていくワークです。
美鈴先生もすでに取り組んでいただいたとのことですが、このワークにはどんな印象を受けましたか?
――中島先生:
私は普段、時間管理を専門にしているので、『pure life diary』でいう「TODO思考」でタスクをこなせない方の支援をしています。
一方、『pure life diary』で大切にしているのは自分のありたい姿を大切にする「TOBE思考」。どんなワークかと気になっていましたが、心理学のカウンセリング手法に近しい印象を受けました。
私たちカウンセラーがカウンセリングの場で聞くような質問と同じようなことがこのワークでも問いとして立てられていて。手帳が代わりにやってくれるなんて!とびっくりしました。
――へいすけ:
なるほど。カウンセリングの現場でも似たような対話が行われているんですね。
――中島先生:
はい。ただ、カウンセリングの現場では、最初から「あなたの大切にしている価値観はなんですか」と大きな問いから入ってしまうことが多いんです。
心理学や内省に精通している方は簡単に答えられると思いますが、多くの方は「自分がよくわからない」といった回答になってしまいます。
――へいすけ:
実は『pure life diary』の価値観を知るワークも、「自分のやりたいことや好きなことがわからない」という声をいただいてできたんです。
当初の『pure life diary』も、「自分が幸せだと感じる瞬間」のような大枠の問いを最初に置いていたのですが、答えづらいという声が多くて。
今では「趣味」「学び」などの身近なところから答える形にし、「暮らし」や「自分にとっての幸せ」のような大枠の質問は最後に持ってきた経緯があります。
――中島先生:
「幸せ」や「価値観」のような抽象度の高い質問にいきなり答えるのはやはりハードルが高いですよね。『pure life diary』のワークは質問の内容だけでなく、順番にも配慮を感じて感銘を受けました。
あとは心理学でいう「コラージュ療法」にも近いワークですね。
――へいすけ:
「コラージュ療法」はどんな心理療法ですか?
――中島先生:
『pure life diary』の価値観ワークのように、8個の領域別に雑誌や新聞の切り抜きで自由に貼り絵をしていく方法です。ピンときたものを非言語的に把握していく意図があります。
人の無意識部分にアプローチできる点では良い手法なのですが、切り抜きを集めるのが大変なんですよね。実際に行うと3時間以上かかります。また、作った貼り絵を見返すことってなかなかないんですよね。
その点、『pure life diary』の価値観を知るワークは、日々使用する手帳のなかに設けられていることで、1年を通じて何度も見ることができるのが良いなと思いました。
認知行動療法「ACT」の観点でも有効な「価値観の掘り起こしと定期的なふりかえり」
――へいすけ:
たとえ価値観を掘り下げて書き出せたとしても、日頃から確認できるようにしておかないと忘れちゃいますよね。定期的に見直せるように、『pure life diary』では価値観を知るワークを3ヶ月に1度の頻度で設けています。
――中島先生:
3ヶ月という期間も絶妙ですね。目標を定期的に見直せるしくみは、ACT(アクト)という認知行動療法の観点でも有効です。
ACTは「アクセプタンス&コミットメントセラピー」とも呼ばれる「今、自分の中にある思考や感情を受け容れながら、自分自身が大切にしたい価値に向かって行動パターンを作り上げる」認知行動療法の一種です。
価値観って、自分のものでも一発で掘り出しきれないんですよね。かつ、1年先を見据えた目標や理想の姿を書こうとするとどうしても建前で書いてしまったり、高すぎる目標を書いてしまったりしがちです。
――へいすけ:
マンツーマンのカウンセリングの現場でもそういったことは多いですか?
――中島先生:
やはり「自分自身が大切にしたい価値」のような抽象的なことはマンツーマンでじっくり話を聞いてもすぐには出てこないことが多いですね。
『pure life diary』の手帳では、3ヶ月に一度ワークが設定されていることで、3ヶ月前に設定した目標や理想が「なんか違ったな」「もう少しこっちかな」と細かく振り返ることができますよね。
自分の気持ちに素直に、価値観を掘り当てられるところが素敵だなと思いました。
強みを知ることが、理想を実現するための行動を起こす後押しになる
――へいすけ:
『pure life diary』は、強みを知るワークにも力を入れています。強みを知ることや、このワークに関しては心理学の観点からどう思われますか?
――中島先生:
私のカウンセリングを受けていただく方の多くが発達障害(ADHD)をお持ちの方なのですが、価値観ややりたいことと、得意なこと・できることがなかなか重ならないんです。
ここで悩んで挫折してしまう方が多いので、自分で自分の強みを自覚することは大事だと思います。強みの発見もできる手帳なんて、画期的ですよね。
――へいすけ:
自分の理想ややりたいことを見つけても、できそうな気がしないと行動がついていかないと思うんですよね。
目標や理想に対して「自分ならできる」と思う、すなわち自己効力感やエフィカシーをあげていくには、自分が持っている強みを自覚することが重要だと思いこのワークを開発しました。
――中島先生:
このワークも、ACTと掛け合わせると面白そうですね。私は時間管理を専門にしているので、タスクをスモールステップに分けて少しずつ達成させながら自己効力感も徐々にあげていくアプローチがメインでした。
一方で、やりたいことや理想に対して自分の強み・できることを掛け合わせてどのように実現していくかを考える、まずは「自分ならできる」という気持ちに持っていくアプローチは、カウンセラーはあまり行っていないので勉強になります。
強みリスト100が用意されているのも、ゼロベースで強みを探すよりハードルが下がって良いですね。
――へいすけ:
当初の『pure life diary』には強みリスト100はなく、「いきなり自分の強みってなんですか」というお声をたくさんいただきました。
強みリスト100を設けてからは、「5分で5個〜10個見つかりました」というお声もいただけるようになりました。
――中島先生:
アップデートされてるんですね!このリストがあるだけでも自分の強みを認識することが容易になりますね。
やりたいことだけを書き出しても、実際に行動に移したり一歩踏み出したりするハードルって高いと思うので、こういった行動に移すための背中押しができるワークが入っているのも『pure life diary』の魅力ですね。
――へいすけ:
やりたいことを叶えるには、重要なことが2つあると思っています。
1つはやりたいことを実現するための心のスイッチが入っているかどうか。もう1つは能力面も含めて「自分ならできる」と思えているか。
この2つがしっかり育っていくとやりたいことが叶いやすくなるのではないかなと考えています。
心理学や認知行動療法から読み解くデイリーページの仕組み
――へいすけ:『pure life diary』は「TOBE思考」を推奨していますが、実はデイリーページには少し「TODO思考」の要素も入れています。
――中島先生:
『pure life diary』のデイリーページには「pure life ピン」と「やること」が書けるようになっていますよね。やりたいこともタスクもどちらも書いてよいのでしょうか?
――へいすけ:
使い方は特に決めていないので、ユーザーが使いやすいように使っていただければと思っています。
ただ、その日のタスクを全部書くというよりは「普段はおざなりにしてしまっているけど本当はやりたいと思っていること」をピックアップして書いてもらうと良いですね。その意図もあり、「やること」の欄は小さくしているんです。
――中島先生:
よくあるTODOリストだと、タスクが10個も20個も書けるようになっていて、できたらチェックする形が多いですが、そうするとできたことがあってもどうしてもできなかった方に目がいってしまいますもんね。忙しくてタスク1つもできなかった日もありますし。
普段やりたいけどできてないことを1つか2つ書いておくくらいであれば、達成のハードルも下がりますし、できなかったと自分を責めることも少なそうですね。
――へいすけ:
やりたいことを叶えるための自動スモールステップ装置のようなイメージですね。また、『pure life diary』ではタスクのふりかえりだけでなく、その日の気持ちのふりかえりやよかったことを書き出すワークがあるのも大きな特徴です。
――中島先生:
嫌だったことじゃなくて、よかったことや感謝をふりかえる点が、心理学の観点でもすごく良いしくみだと思います。
人間の思考として、どうしても嫌だったことに目が行きがちなので、意識的によかったことや感謝にフォーカスできることは、気持ちを前向きに保つことにも有効ですしすごく良いですね。
心理学では「セルフモニタリング」と言われる、自分の気持ちや体調、内面にフォーカスする手法があります。日々忙しなく過ごしているとどうしてもTODOに目が行きがちになりますし、自分の気持ちってなかなか人に言う機会もないですよね。
日々意識が外に向きがちなところを、デイリーワークで内面に戻すことができる。自分の気持ちに敏感になっていると、早めに不調に気づいたり、本当にやりたいことに気付けたりします。これは治療にも使っている方法なんですよね。
――へいすけ:
『pure life diary』は当初、手帳でもコーチングを実践できればと思って作った手帳でしたが、カウンセリング的なアプローチでも有効な部分があると知れてうれしいです。
認知行動療法「ACT」と「pure life 診断」ワークの共通点
――へいすけ:
自分の心の状態をチェックする話でいうと、3ヶ月に1回「pure life 診断」というワークも設けています。「自己理解」「行き先」「行動」「状態」の4項目について、自分の状態を改めて見て点数をつけるワークです。
――中島先生:
価値観を知るワーク同様、「pure life 診断」も特に「行動」の項目が認知行動療法「ACTの手法と通じているなと感じました。
たとえばこの1つ目の問いの「ありたい(なりたい)方向に日々意識を向けられているか」って、ACTでも問いとして聞くことが多いんです。
自分の心や生活の状態に点数をつけるのも、実は少年院で行われている取り組みです。少年院でも、日々こういった項目に自分を照らし合わせて点数をつけてグラフ化してもらっています。『pure life diary』は随所にACTと同様の考え方が入っていていて驚きました。
「ありたい(なりたい)方向に日々時間を使っている」という聞き方も良いですね。
――へいすけ:まさに、「できたかどうか」ではなく「時間を使ったかどうか」を聞いているのがポイントです。
ありたい姿を実現するためにはやはりスモールステップでも行動することが大事で、手帳と合わせてワークにすることで理想に向けた行動も習慣化しやすいと考えて制作しました。
――中島先生:
『pure life diary』って、手帳の機能でなくワークとしてだけでも出版できそうですけど、あえて手帳の機能と合わせて多くのワークを設定されているのは理想を実現するための行動の習慣化を促す意図があるのですね。
――へいすけ:おっしゃる通りです。日々の気持ちのふりかえりと、3ヶ月に1回、価値観や心の状態のふりかえりをしながら、少しずつでも行動が習慣になっていけば人生は絶対変わっていく確信を持っています。
『pure life diary』は現状に行き詰まっている方の希望の光となる手帳
――へいすけ:最後に、心理学に通ずる『pure life diary』の特徴やおすすめのポイントなどがあれば教えていただけますでしょうか。
――中島先生:
まず自身の大切にしたい価値観を掘り起こすところから丁寧に伴走してくれる手帳ですよね。そして大切にしたい価値観に沿った日々の時間の使い方も応援してくれている。今までの手帳になかったコンセプトだと思います。
この『pure life diary』のコンセプトに近しい、認知行動療法ACTも今心理学分野では非常に注目されている技法です。
現状に対して、これまで取り組んできたタスク管理やノウハウ本を読むことでは解決できず悩んでいる方でも、心のなかに理想を描いたり希望を描いたりすることで、人生ってすごく変えていけるんですよね。
現状に行き詰まって悩んでいる方のそばで応援してくれる手帳ですし、希望の光だなと感じます。
――へいすけ:素敵なコメントをありがとうございました。今後、『pure life diary』としてもさまざまな分野の専門家野方などとコラボレーションしながらあらゆる側面から『pure life diary』の有効性を見つけていきたいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!